ロジスティック回帰分析でオッズ比が極端に大きく/小さくなった時の対処

ロジスティック回帰分析でのオッズ比 臨床研究計画
ロジスティック回帰分析でのオッズ比

観察研究で統計解析を行う際、ロジスティック回帰分析も含め、回帰分析を行うことがかなり多いと思います。観察研究ではRCTと異なり、2つの変数の間に何らかの相関がみられても、交絡による擬相関をみている可能性が高いため、可能な限り交絡の可能性がある変数の影響を補正した関係を調べる必要があるためです。

ロジスティック回帰分析では、ある説明変数が従属変数に対し、どの程度関係があるかの目安としてオッズ比が示されます。そのオッズ比が極端に大きく、あるいは小さくなったことはないですか?例えば、10の10乗オーダーくらいの大きさです。手元にあるデータでちょっと例を出してみます。

 
異常に大きいオッズ比

異常に大きいオッズ比

あまりにも大きくてこのオッズ比(Exp(B)の部分)が何を意味しているのかよくわからない、となるかと思いますが、これはロジスティック回帰分析のオッズ比の性質によるものです。

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ロジスティック回帰分析のオッズ比の意味

ロジスティック回帰分析におけるオッズ比は、他の説明変数の値が一定だとして、ある説明変数の値が1増加した場合のオッズ比を表します。

そのため、その説明変数が一般的に1よりも極端に小さい値を取るため、1増加するのは現実的にありえないほど劇的な変化量である場合、その説明変数に対するオッズ比は極端に大きくなります。逆にその説明変数が一般的に1よりも極端に大きい値を取るため、1増加するのは誤差と捉えられる微小な変化量である場合、その説明変数に対するオッズ比は極端に小さくなります。

大きすぎる/小さすぎるオッズ比への対応実例

例えば、この論文をみてみましょう。

この論文では、90日後の死亡とベースラインの脳脊髄液(CSF)のバイオマーカーとの関係を調べるのに、従属変数に90日後に死亡したかどうかという名義尺度を、説明変数にCSF中のアミロイドβ42の濃度(pg/ml)を用いて、ロジスティック回帰分析を使っています。その際、説明変数のアミロイドβ42の値は、元の値の100分の1倍にしたものを用いています。これは、CSF中のアミロイドβ42の濃度が一般的に数百pg/ml(この論文ではだいたい平均で300pg/ml程度)になるため、この値が1増加するという変化はあまりにも小さく、元の値のままロジスティック回帰分析を行うと、オッズ比が極端に小さくなり、その意味が解釈しにくくなるからです。この解析の結果、アミロイドβ42(pg/ml)の100分の1倍した変数に対するオッズ比は0.79と出ました。CSF中のアミロイドβ42の濃度が100pg/ml上昇した場合の90日後の死亡のオッズ比が0.79ということです(アミロイドβ42の濃度は低いほどアルツハイマー病理を示唆します。つまり、この濃度が高い=アルツハイマー病理の存在の可能性が低いほど90日後の死亡リスクが低いということですね)。

また、この論文では同じように説明変数にアミロイドβ42とアミロイドβ40の濃度比を用いたロジスティック回帰分析を行なっています。こちらは一般的に0.1弱の値になることが多く(この論文ではだいたい平均が0.06程度)、1増加するという変化があまりにも大きくなり、元の値のままロジスティック回帰分析を行うと、オッズ比が極端に大きくなり、その意味が解釈しにくくなります。そのため、この値を10倍した数値を説明変数に用いています。

冒頭の例で説明変数を調整してみた場合

以上のことから、統計解析を行う際に、適切な解釈を行うためには、統計量の意味を把握し、その意味が解釈しやすくなるように変数を適切に調整する必要があります(もちろんこれは変数を都合よくいじってデータを捏造する、ということとは全く意味が異なります)。実際に、冒頭に出した手元にあるデータをみてみましょう。この説明変数の値は次のようなものです(ちなみにデータ数は100以上です)。

説明変数の記述統計量

説明変数の記述統計量

このように、平均値が小さく、最大でも0.2の値しか取らないため、「1増加する」という条件でのオッズ比は現実的ではないことがわかります。

そこで、この説明変数を100倍した値を説明変数として、同じようにロジスティック回帰分析をかけてみましょう。

説明変数を100倍にしたロジスティック回帰分析

説明変数を100倍にしたロジスティック回帰分析

現実的に理解しやすいオッズ比が出てきました。つまり、元の説明変数が0.01増加すると、従属変数が1となるオッズ比は1.224という結果になりました。統計量が臨床的に理解しやすくなるような工夫をしたいものです。

ロジスティック回帰分析でのオッズ比

ロジスティック回帰分析でのオッズ比

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