学会発表目的を明確にし、情報を取捨選択せよ-学会で症例報告するときに気をつける3つのこと①

KISSの法則 学会発表
KISSの法則

学会シーズンがひと段落。例年この時期は僕の研究室の若手の先生に、最近経験した症例について報告してもらうので、その抄録や発表の内容をチェックするのが僕たちの役目で、自分の学会発表の傍ら、若手の先生の発表内容について繰り返しやり取りをしていました。

その中で、僕が繰り返し修正を求めたのは、主に次の3つに集約されました。

学会で症例報告するときに気をつける3つのこと

・発表目的を明確にし、情報を取捨選択せよ(今回の投稿)

論文のスタイルに引っ張られすぎるな(次回の投稿)

デザインを統一せよ(次々回の投稿)

今回はこの3点のうち、「発表目的を明確にし、情報を取捨選択する」ということついて思うところを書いています。

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KISSの法則って知ってる?

学会発表の準備をしている若手の先生のプレゼンテーションを見ていると、大体次のようなことが起こっています。

若手のプレゼンで起こりがちなこと

・プレゼン時間を超過する

・論点がはっきりせず何が言いたいかわからない

・話が行ったり来たりして混乱する

今回は、このようなことを改善するために、発表すべき内容をどのように選ぶかということを中心に書いていきます。

ちなみに、発表においてよく言われるのが「KISSの法則」です。

KISSの法則

Keep it Short and Simple

短く、簡潔に

今回からの一連の発表に関する話はこのKISSの法則を実践するためにどうするか、という話と思ってください。

その症例で目新しく、世間に伝えたいことは何?

そもそも、症例報告に当たってなぜそれをわざわざ発表するのか、という目的がはっきりしていないことが若手のプレゼンで多いと思います。

若手の先生は学会発表に当たって、指導医と発表に値するか相談する、あるいは指導医からこの症例を発表してと言われることがあると思います。

しかし、指導医が思っている発表のポイントに若手の先生が気づいていなかったり、あるいは気づいているものの漠然としているため、発表の内容がボヤケていることが多いです。

症例報告をする目的として代表的なのは以下のような場合だと思います。

症例報告の目的

・既知の病気だが稀な病像や経過を辿り、診断・治療に難渋したことを報告する

・標準的な治療で効果が得られず難治性だった症例が最終的にうまく治療できたことを報告する

・標準的な治療の過程で希少な副作用が出現し、どうマネジメントしたかを報告する

・未知の、あるいは希少な病気を報告する

他にもあるかとは思いますが、とにかく第一歩は、その症例が他の症例と異なり、あえて学会発表する理由は何か、発表の目的を明確にすることです。

なんだったらパワーポイントの最初にこの目標を言語化して記載してしまいましょう。

ちなみに僕は学会発表のアウトラインをEvernoteにまとめていて、その最初にこのような発表目的を言語化して書いています。

目的達成のために必要な情報を列挙する

発表目的がはっきりしたら、その目的達成のために必要な情報を列挙しましょう。

上述した目的の中で、例えば「既知の病気だが稀な病像や経過を辿り、診断・治療に難渋したことを報告する」というケースを考えましょう。この目的を達成するために必要な情報は、

・間違いなく既知の病気であることを示す情報

・しかし稀な病像/経過であることを示す情報

・最終的にいかにして診断・治療したかを示す情報

・この経験からどのような新しいことが言えるかを示す情報

ということになります。

既知の病気であることを示すには、その病気の診断基準に合致していることを示すその症例の情報を提示する必要があります。

稀な病像/経過であることを示すには、その病気の典型的な病像/経過と比較して、その症例が特殊であった点を挙げなければなりません。

最終的にいかにして診断・治療したかを示すには、どのような鑑別疾患を意識し、鑑別の決め手となった情報はなんなのか、どのような治療をしたのかを明記するべきでしょう。

最後にこの経験からどのような新しいことが言えるかを示すには、過去の研究と比べたときの新規なポイントを論じる考察をする必要があります。

このような形で、目的達成のために必要な情報を挙げていくのは非常に重要な過程です。

必要な情報以外は発表時間などの兼ね合いで削る

症例報告に当たって、必要でない情報を削るのは以下のようなメリットがあります。

症例報告で不要な情報を削るメリット

・論点がはっきりし聴き手が理解しやすくなる

・限られた発表時間を守れる

・不用意に患者の個人情報に繋がることを提示しないで済む

症例報告ではその症例について可能な限り詳しく提示したほうがいい、と思うかもしれません。

ですが、例えば脳血管障害で生じた稀な精神症状を報告したい場合に、その精神症状がもともとあったものではないことを示したい、という気持ちから、生育歴や既往歴に特記すべき事項がなかったことを2,3分かけて詳細に語ることに意味はあるでしょうか

こういうところはスパッと「病前にこのような症状をきたす素因はなかった」程度に済ませてしまっても、目的達成の上で支障はないでしょう。

アウトライン(スライドの見出し)だけ先に作ってしまう

このように必要な情報は何かを列挙し、それを自分の伝えたいことを伝えるための順序に並べ替え、まずアウトラインを作ってしまいます

このアウトラインは、プレゼンスライドの見出しになる、と思えばいいかと思います。

わかりやすいプレゼンテーションをする上で意識すべきは、「1スライドに1つの話題」に絞って提示することです。スライドの切り替わりは視覚的に話題が転換することを表してくれます。なので、話題が切り替わるタイミングがスライドの切り替わるタイミングと合致すると、聞いている方からすると非常にわかりやすい。

逆に、1スライドに2つ以上の話題が入っていると、いつ話題が転換したのかがわかりにくくなってしまいます

そのため、アウトラインにあげたことがそのままスライドのタイトルになる、というイメージを持つといいでしょう。

ちなみに僕のブログは基本的にどのようなことを書くかアウトラインを決め、それがそのまま「目次」になります。その目次にしたがって書く内容をまとめていくわけです。

最後に伝えたかったことをまとめる-Take Home Message

若手の先生の学会発表を見ていると、その発表にどのような意義があるのか、聴衆にどんなことを知ってもらいたいのかが曖昧なままスライドを作っていることが目立つように思います。よくプレゼンで見られる“Take Home Message”が何か、という意識が少ないのです。

若手の先生は指導医から学会発表をするようにと迫れれていて、あまり主体的に発表していない、というケースもあるでしょう。また、未熟な医師である自分が周りに”Take Home Message”などおこがましい、と思うかもしれません。

ですが、あなたの発表を聞く側の人にとっては、Take Home Messageがなければそもそもその発表を聞いている時間は無駄になります

何を知って欲しいのかを見出せない発表は意味がありません。なので、この発表を聞くことによってどのような新しい事実を知ることができるのか、そのような発表の目的を意識することは学会発表で非常に重要になります。

時々、「地方会は若手の発表の練習だから」という意見を聞きますが、発表の練習というのであれば、何を知って欲しいのかをきちんとプレゼンする、ということも含めて練習をすべきです。

最後に”Take Home Message”というタイトルのスライドを掲げるのは少しハードルが高いと感じるかもしれません。だったらタイトルを「結論」や「結語」にしたっていいんです。

最後にこの発表で何を伝えたかったか、掲げるのです。

発表目的を意識し、情報を取捨選択する

今回は「発表の目的を意識する」ということをテーマに、学会発表のスライド作りを考えました。

今回意識したことは、学会発表という限られた時間のなかで、「伝えたいことを伝え、それを阻害する不必要な情報は捨てる」ということにつながります。

「プレゼンテーションでは短く、簡潔に」というKISSの法則を意識しましょう。

最後に今回書いてきたことをまとめます(Take Home Messageですね)。

学会発表のスライド作りで意識すべきこと

・発表の目的(何を伝えたいか)を明確にする

・発表目的を達成するために必要な情報を列挙する

・必要な情報以外は最低限の提示に止める

・列挙した必要な情報の順序を考えアウトラインを作る

・アウトラインをスライドタイトルとし、「1スライドに1話題」として肉付けする

・最後に伝えたかったことを再掲(Take Home Message)

まずは発表の目的を意識することから始めてみませんか?

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