リサーチクエスチョンを事前に意識すれば研究計画/結果解釈はこんなにも変わる

リサーチクエスチョンを意識する意義 臨床研究計画
リサーチクエスチョンを意識する意義

臨床研究をするモチベーションは一体なんですか。

研究をするからには、なんらかのリサーチクエスチョン(RQ)があり、それを解決することが目的のはず。

RQを意識せずになんとなくデータを統計解析し、なんとなくp値が0.05を切ったから論文にしよう、というやり方は様々な面で問題があるし、仮に有意差が出なかったとして、「有意差が出ない」ということが重要な知見(真実)である場合、きちんとRQを意識しておかなければ、その重要性に気づかずスルーしてしまうことにもなります。

今回はそんなRQを事前に意識しておくことの重要性を考えてみます。

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リサーチクエスチョンを見つける

そもそもRQはどのように見つかるのでしょうか。

大きく分けて次の3つのパターンがあるんじゃないかと思います。

リサーチクエスチョン(RQ)の見つけ方

1 ふと思い浮かぶ

2 これまで研究されてきたことで未解決のことを調べる

3 クリニカルクエスチョン(CQ)に出会い、それがRQになる

1.が量産できるというのは、天才か変態か紙一重、と言われる領域の人たちのなせる技ですし、なぜそのことを研究すべきなのかという理論的な背景が曖昧で、そのRQの重要性がわかりにくくなってしまう可能性もあります。そもそも研究計画書や論文で背景が描きにくい!

2.ができるのは基本的にはその領域の研究にそれなりに携わってきた人が、一つの仕事を終えた際にさて次は、と取り組む時でしょう。

研究の経験がないけれど、臨床研究をやってみたい、と思う医師が、ある程度きちんとした研究をするには、3.の方法を取るのが一番妥当なところでしょう。

そしてそのためには、日常臨床でCQを捉え、それを解決する意識を持つことが重要になります。

これはつまり、「良き臨床研究者は良き臨床医でもある」ということにつながるかと思います。

とはいえ、CQが単純にRQになるかというと、そう簡単にはいきません。

凡人が疑問に思うことは先人が殆ど解決している

CQと言われて思いつくのはなんでしょうか。

私の中ではガイドラインです。

近年の様々な疾患のガイドラインは、CQを提示し、それに対する回答をエビデンスを添えて提示する形式になっています。

そのため、日常臨床で出会ったCQに対しては、まずガイドラインでそのCQへの回答が提示されているかを探してみるのが一番手っ取り早い方法になります。

ガイドラインを見ればわかりますが、私たちのような凡人がぶつかるCQは、そのほとんどが偉大な先人によって答えが出されているのです。

例えば先日研修医から、認知症患者がうつ状態になっているが、抗うつ薬は有効なのか、というCQを質問されました。

とりあえず、認知症疾患診療ガイドライン2017を見てみると、CQ3B-4に「うつ症状に有効な非薬物療法・薬物療法は何か」というCQがあります。

ここでの推奨では、「非薬物療法を行っても改善を認めない場合は、SSRIやSNRIなどの抗うつ薬の使用を考慮する」とされています。しかし、エビデンスレベル・推奨グレードは2Cと、「弱い」エビデンスになっています。

実際にそのCQの解説を見てみると、「抗うつ薬に関して10のRCTと3つのメタアナリシスをまとめたシステマティックレビュー」があり、「抗うつ薬の効果は不確実であると結論づけられている」そうです。

つまり、このCQに対してはすでに10つもRCTがされているので、単純な「認知症患者のうつ状態に抗うつ薬は有効か」というRQで研究をしても、徒労に終わる可能性が高いのです。やはり、私たち凡人がパッと思いつくCQですから、先駆者が研究していないわけがないのです。

ちなみに、CQの答え探し方について、別記事でまとめました。

クリニカルクエスチョン解決のためにガイドライン/Cochrane/PubMedをフル活用する
よく臨床でクリニカルクエスチョン(CQ)にぶつかると思う。その時、その答えをどう探すかを知らない研修医が意外と多い。CQの答えをどこをどんな基準で探すか、の一例を、ガイドライン/Cochrane/Pubmedで実例紹介。

RQを考える意義①:意味のない研究を避ける

今回、CQが現時点ではそのままではRQにならなさそう、という結果に終わりました。このことは非常に重要なことです

もし仮に何も考えず、今回の「抗うつ薬は認知症のうつ症状に効くか」というCQを検証する研究をしよう!としたとします。

多大な労力やお金をかけてデータを集めて、統計解析をしたものの、後になってよくよく考えるとすでに先行研究があり、RCTのシステマティックレビューまでされている(つまり、かなり高いエビデンスがある)状態だとわかり、今更論文として投稿してもなかなかアクセプトされない、という徒労に終わってしまいます。

RQを事前に意識する、というのは、このように「現時点で研究するに値するか」ということを事前に検証し、意味のない研究を避けるということを意味します。

また、先行研究のlimitationを把握する事で今のCQをどのように工夫すればRQ足り得るか、に繋げることができるでしょう。

RQを考える意義②:有意差がない、という結果にも意味があると気づく

ところで今回確認した、すでに検証された「抗うつ薬は認知症のうつ症状に効くか」というRQの答えは、「効果は不確実」という結果になっています。つまり、RCTを行なった結果、プラセボと有意差が出なかったわけです。

有意差が出なかった、という結果を意味があるものと判断して論文として出版するには、事前に「抗うつ薬は認知症のうつ症状に効くか」というRQを解決する意義があると把握しておく必要があります

なんとなくデータを集めてなんとなく統計解析していると、有意差がない、というところに囚われて重要な知見を見過ごしてしまう可能性があるわけです。

[adchord]

研究計画前にリサーチクエスチョンを意識する事の意義

ということで、今回はRQの重要性を考えてみました。

そもそも研究計画時点でRQを意識することが、以下の点で重要とわかりました。

リサーチクエスチョンを意識する意義

リサーチクエスチョンを意識する意義

実際にはこれ以外にもRQを事前に意識することの重要性はありますが、ひとまず今回はCQからRQを考えるという例からRQを考えることの重要性にスポットを当ててみました。

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