先日、クリニカルクエスチョン(CQ)の答えを探す、と題して、ガイドライン/Cochrane/PubMedなどを用いて文献検索をする方法の例を紹介しました。
今回はCochrane/PubMedなどで文献検索する際に、どんな用語で検索すればある程度網羅的に検索できるかを考えます。
ちなみに先日の投稿はこちら。
検索に使うキーワードを決める
先日の「うつ状態の認知症患者に抗うつ薬は効果があるか?」というCQに対して、この文章をそのまま英文にして検索窓に打ち込んで検索してもうまくいきません。
うまくキーワードを組み合わせて目的の文献を探す必要がありますが、そのキーワードをどう決めましょう?
クリニカルクエスチョンを定式化する:PECO/PICO
よくPECOとかPICOという言葉が使われます。このPE(I)COは、自分が持っているCQ/RQを以下のポイントで定式化することで、①情報収集に使えるキーワードを明確にする、②参照している論文の内容を簡潔にまとめ理解を促す、③自身の研究計画を明確にできる、などのメリットがあります。
PE(I)COは以下の要素の頭文字を取っています。
(例:CQ「うつ状態の認知症患者に抗うつ薬は効果があるか?」)
要素 | 例 | |
---|---|---|
P | Patient(患者) | うつ状態の認知症患者 |
E / I | Exposure(暴露) / Intervention(介入) | 抗うつ薬を投与 |
C | Comparison(比較対照) | 抗うつ薬を投与しないうつ状態の認知症患者 |
O | Outcome(結果) | うつ状態の変化に違いはあるか |
EとIの違いは、観察研究だと、「副流煙に暴露されたかどうかでその後呼吸器障害の発症率に違いがあるか」といったRQを調べる、つまりある要因に暴露されたかどうかがポイントになり、介入研究だと、「抗うつ薬を投与するという介入でうつが良くなるか」といったRQを調べる、つまり何らかの介入をした可動かがポイントになる、という研究デザインの違いによるものです。
PE(I)COは研究に重要な4つの要素を簡単な言葉で明確にすることで、検索に用いるキーワードを意識させてくれます。
文献検索の際はPとE(I)に挙がる用語を用いれば十分です。というのも、例えば抗うつ薬の効果判定をする研究だと、比較対照(C)をプラセボ投与群にして、結果( O)をプラセボより有意に改善させるか、というデザインもあれば、Cを既存の抗うつ薬投与群にして、Oを効果に差がない、という非劣性試験のデザインにしているものもあります。
つまり、同じRQに対して、研究デザインの違いによってCOは異なる可能性があるわけです。
「抗うつ薬の効果判定」というRQを調べるためには、どちらも検索に引っ掛けたいですよね?
キーワードを検索に適した英語にする
キーワードを検索に適した英語にする方法として、次の2つを紹介します。
ガイドラインやレビューなど2次情報を参照する
どんな英語の検索語でで検索するか知りたければ、実は一番手っ取り早くて有効な方法は、ガイドラインやシステマティックレビューなどの2次情報を参照することです。
ガイドラインだと、各CQへの回答をどのように検索したか、検索式が書かれています。その検索式で使われている英語はPubMedなどで検索するのに適したものになっています。
また、Cochrane Reviewsなどのシステマティックレビューも、Methodsでどのように「システマティックに」検索してレビューを行ったかを書いており、そこに検索語が書かれています。
これは前回の記事でも紹介した方法ですね。
MeSHワードかを調べる
MeSHとは、Medical Subject Headingsの略で、米国国立医学図書館による生命科学用語集です。
つまり、MeSHに乗っている用語は公式なもので、生命科学系の検索をするにはもってこいの言葉です。
自分の調べたい事柄のMeSHワードを知るには、PubMedのトップページの右カラムみある、”MeSH Database”から検索しましょう。
ここの検索窓に、今調べたキーワードを思いついたまま英語にして打ち込むと、その言葉をMeSHワードそのもの、あるいはその説明文の中に含むMeSHワードを表示してくれます。
例えば、前頭側頭葉変性症は英語で”frontotemporal lobar degeneration”ですが、”frontotemporal lobe degeneration”と間違って認識していたとしましょう。これをMeSHの検索窓に入力すると・・・
見事”frontotemporal lobar degeneration”と”frontotemporal dementia”の2つを表示してくれました。
検索ワードの作り方まとめ
最後に今回紹介したPubMedやCochraneでの検索ワードの作り方のまとめです。